子育てをしているとイライラしちゃうことってよくありませんか??
今回はそんな子育てのイライラを少しでも少なくするために、保育士のぼくが子育てに使える秘策を紹介します!!
保育士は普段から10人以上の子どもを1度に相手にし、すべての子どもの個々の成長を考えながら関わる子育てのプロです。どんな職業でもそうですが、プロにはプロのスキルがあります。
今回紹介する「発達の最近接領域(さいきんせつりょういき)」も、そんな数あるスキルの中の1つです。保育士はこれを理解して実践しているからイライラせずに子どもたちも関わることができるんです。
勘違いされやすいので初めに断っておきますが、プロのスキルと言っても、「発達の最近接領域」は子どもをコントロールするものではありません。子どもの成長を考える時の参考になる考え方だと思ってください。
「発達の最近接領域」をざっくり言うと、
子どもには「すでに1人できること」と「まだ1人でできないこと」があるわけですが、ちょうどその間にある「周りに少し手伝ってもらうことでできる領域」のことです。
それでは、具体例も交えながらもう少し詳しくみてみましょう!!
発達の最近接領域とは??
「発達の最近接領域」はロシアの心理学者であるレフ・ヴィゴツキーさんが作り上げた理論です。
ネットで定義を調べるとこう出てきます。
発達の最近接領域(zone of proximal development)とは、子どもが自力で問題解決できる現時点での発達水準と、他者からの援助や協同により解決可能となる、より高度な潜在的発達水準のずれの範囲
参考リンク:発達の最近接領域
はいはい。
毎度のことですが、学者さんはどうしてもこうもお堅い言い回しをするのか。全然頭に入ってこない(笑)
これを言い換えると、
「子どもが今もうすでに1人できること」と「今はまだ1人でできないこと」の間にある、
「大人に少し手伝ってもらえばできること」の範囲です。それが「発達の最近接領域」。
ちょっとカッコよく言うと、ZPD(zone of proximal development)となります。
日常生活をイメージすると「発達の最近接領域(ZPD)」をもっと理解しやすくなると思います。
2 つほど例を挙げてみます。
例1 バナナの皮むき
2歳の男の子がいました。彼はバナナが大好きです。でも1本丸々目の前に置かれてもまだ自分で皮を剥くことができません。
そこでお母さんはいつも全部剥いてあげてから男の子に渡していました。
ある日、いつものように皮を剥いてあげようと、バナナの先をちょっとだけ剥いたところで、ちょうど火にかけていたやかんのお湯が沸騰し始めました。お母さんは男の子の前に剥きかけのバナナを置いて火を止めるために急いでキッチンへ行きました。
火を消して子どもの所へ戻ってくると、お母さんの目にはビックリする光景が。
男の子が皮を剥いたバナナをもぐもぐ嬉しそうに食べているではありませんか。
なんと、男の子は少しだけ皮の剥いたバナナであれば残りを自分で剥くことができたのです。
さて、この例の場合、男の子の発達のための最近接領域はどこだかかわかりますか??
ヒントはこの3つ。
- 皮の剥いてあるバナナは自分で食べることができる
- 目の前に皮の剥いてないバナナがあっても自分で剥くことができない
- 少しだけ皮が剥いてあれば自分で剥いて食べることができる
そうです。この場合の最近接領域は「最初の少しを剥くことができるようになること」です。
つまり、男の子の発達のためには、お母さんは目の前でバナナの剥き方をゆっくりと見せてあげたり、子どもに手を添えて一緒に剥いてみる援助が必要になります。
例2 靴を履く
もう1つはこんな例です。
玄関に2歳の女の子がいます。彼女はイヤイヤ期まっただ中。お母さんの真似をして靴を自分で履きたくて仕方ありません。
最近になって靴を止めるマジックテープは上手に剥がせるようになりましたが、どうしても踵(かかと)まで足を入れることができず毎回泣き出してしまいます。
そんな娘を見て、お母さんは仕方ないので毎回靴を履かせてあげています。
さて、この女の子の「発達の最近接領域」はどこでしょうか??
お母さんはこの女の子の発達のためには、何をしてあげると良くて、何をしてしまうと良くないでしょうか??
子育てでイライラしてしまう理由
2つの例を通して、今回のテーマである「発達の最近接領域」を知ることがなぜ子育てのイライラをなくすことに繋がるのか、なんとなく分かっていただけましたでしょうか??
子育てでイライラしてしまう場面は、多くの場合、この「発達の最近接領域」がズレていたりする場合が多いのです。
親御さんがよく使いがちな「それくらいできるでしょ?」という言葉や思い込み。
「それは本当にもうその子1人で出来ることでしょうか??」
先ほどの例1で言えば、男の子に「ほら自分で剥きなさい」といってバナナをボンッと机の上に置いてしまうだけでは、まだ自分で剥けない男の子は、いつまでも触って遊んでいたり、投げたりするしかできませんよね。するとそれをみたお母さんになんて言われるか。
「早く食べなさい!!」「食べ物を投げるんじゃありません!!」
そうやって、子どもの最近接領域を見誤ってイライラしてしまうことが多くなるわけです。
これは、小さな子どもだけでなく、小学生や中学生も同じです。もっといえば大人になって会社で後輩や部下に対しても同じ見方ができます。
小学生の子どもが掛け算が分からないという。でも足し算も引き算もできる。ということは、その間にあるステップのどこかにその子の最近接領域があるということ。
職場の後輩がいつも同じ間違いをしてイライラしてしまう。ということは、後輩はその作業のどこかのステップができていないわけです。
つまり、子育てでイライラしてしまう時というのは、
- 子どもがまだ到底できないことを1人でさせようとしている
- 親は出来ると思っているけど実際はまだそれができる段階じゃない
- ほんとはやって欲しいのにできない
といった場面が多いことが分かります。
そうやって考えていくと、小さい子どもなどは特にですが、ZPDを知るためには相手をよく観察し、それぞれの課題を見極めて援助してあげる必要があるんですよね。
保育士が仕事中になぜイライラすること少なくたくさんの子どもと関われるかといえば、まさにこの「発達の最近接領域」を理解しているからです。クラスの子ども一人ひとりの様子をしっかりと把握して「発達の最近接領域」を見極めているので、それに合わせた適切な援助を個々にしているのです。
子どもは【成長・発達】という名の階段を日々登っているわけですが、最近接領域というのは、子どもが今いる段の1つ上の段のことだと思っています。
ZPDにアプローチすることは、最初は難しいかもしれませんが、慣れれば結構簡単にできるようになります♪♪我が子のZDP調べ、ぜひ一度挑戦してみてください。
「過保護」と「放任」の間が最近接領域
イメージですが、発達の最近接領域を考える時に1つの目安になるのが「過保護」と「放任」です。このどちらも、子どもの成長を遅くしてしまう原因になるので注意が必要なんです。
というのも、(これはちょっと極端な言い方になってしまうのでざっくりとだけ捉えて欲しいのですが、)最初にZPDの定義の所で「子どもが今もうすでに1人できること」と「今はまだ1人でできないこと」の間にある、
「大人に少し手伝ってもらえばできること」の範囲。だと言い換えました。
ということは、
「子どもが今もうすでに1人でできること」を親がいつまでもやってあげていたら過保護になって、子どもが自分でやって成長する機会を奪うことになってしまいます。
逆に、「今はまだ1人でできないこと」を自分で考えてやりなさいと投げつけてしまうと放任になって、子どもは最初は挑戦するかもしれませんが、まだ難しくてできないので、できない自分にイライラして短気になったり、「どうせ自分なんて何をやったって」と悲観的になってしまう可能性が高くなります。
例2で出した靴を自分で履きたい女の子でいえば、「手を出すとグズるから」とお母さんが何もしないと、放任とまでは思いませんが、女の子にとっては「やる気はあるけどやり方が分からない」状況に、自己肯定感が持てなくなってしまいます。
逆に、「まだこの子は1人で履けないから」と全てをお母さんがやってしまったらそれは過保護であり、女の子が自分で挑戦して成長する機会を奪うことになります。
こう考えると、子どもを育てるってとってもピンポイントなんですよね。そして時間と根気が必要。だから、ぼくは今の日本のようなパパやママが仕事や家事に忙しくしないと生活していけないような環境は子どもにとっても親にとっても良くないものだと思っています。
他の子と比較するのはNG
もう1つ、子育てでイライラしてしまう理由として、身近な子(同級生や兄弟)と比べてしまったり、育児書などの発達指標と見比べたりして、「なんでできないの?」と思ってしまうことがあります。
しかし、当然ですが同じ年齢でも一人ひとりのZDPは違います。確かに、初めての子育てともなれば、「ちゃんと成長していくかな」「大丈夫かな」なんて不安を常に抱えている場合が多いと思います。
焦って、「もう◯歳だから〜くらいは」と期待を込めすぎると、子どもはいつも怒られたり急かされてばかりになってしまいます。
そんな時は、この言葉を思い出してください。
このブログのキャッチフレーズでもあるのですが、「だけどね、大丈夫。」です。
子育てをしていて不安が出てくるのは仕方がないことなのですが、その不安のせいで子どもとの関わりが楽しくないものになってしまったらもったいないです。
他人の子どもを気にしたり、育児書の情報がいつも正解だと思うことは目の前にいる大切な我が子から目をそらしていることになります。
きっと子どもはそれは望んでいないと思います。小さな子どもが望んでいるのは、成長するために次に挑戦する課題とそれに挑戦するための全力サポートです。
「よそ見しないで、ちゃんとこっちを見て!!」そう言いたい子どもたちも多いのではないかと思います。
さいごに
子どもは一人ひとり、自分に用意された階段を毎日一段一段、登っています。そんな中でぼくたちが大人ができることは、子どもが次の段に登るためにほんの少しお手伝いをしてあげることだと思います。
抱っこやおんぶで高い所に連れて行ってもダメだし、「勝手に登りな」と見放してもダメなんです。
そのちょうどいい距離感が「発達の最近接領域」ということになります。
ZPDという心理学用語を覚える必要はありませんが、
- 子育てでイライラしないため
- 子どもの成長を援助するため
に、考え方を覚えておくのはとてもおすすめですよ♪♪
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今回も最後まで読んでくださってありがとうございました。