7〜12歳 全年齢

子どもを褒めて育てることは良いことか、それとも逆効果か。

かんかん

「子どもって褒めて育てるものよね♪」

そう思っている人は多いのではないでしょうか。

しかし、今回のお話は「子どもを褒めて育てる」ということを違った視点から考えてみます。

褒めてもらうことは誰だって嬉しいですし、子どもにも良い影響がある気がしますが、実は重大な落とし穴が隠されているのです。

 

今回の話の結論を先に言うと、

子どもを褒めて育てることには良い効果がある。

ただし、褒め方を間違えると逆効果になる。

となります。

 

一般論

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yohoprashant (CC0), Pixabay

「褒めて育てる」という関わり方は多くの人に人気ですよね。親御さんから学校の先生、スポーツのコーチなど、「教員」や「指導者」と呼ばれる人たちから人気のある指導方法です。

確かに自分が言われる立場になって考えてみれば褒められることは嬉しいですし、叱られるより褒められたいと思います。

よく言われる一般論としても、「子どもをほめて育てると自分に自信を持つので、その自信を元にいろんなことにチャンレンジしていける子どもになる」という考え方があります。

「自信」というのは「自分を信じること」ですが、「自分を尊敬できていること(自尊心がある)」とも言えます。

そして、

心理学の研究では、自尊心が高い生徒は、教員との関係が良好で、学習意欲が高く、実力に見合った進路を選択している傾向があることが指摘されています。(『「学力」の経済学』)

 

研究結果でそんなことを言われたら、

「やっぱり自尊心を高めることが大事なんだ!」
「そしたら子どもの学力も上がるんだ!」

と思ってしまいますよね。

 

日本人は自尊心が低い!?

そんな自尊心ですが、実は日本人は自尊心が低い傾向にあるということも分かっています。

日本青少年研究所が、日本、アメリカ、中国、韓国の中高生を対象に行った調査で「自分はダメな人間だと思う」と答えた人の割合で、日本の中高生は他国の生徒たちと比べて自分の能力に対する自信に欠けていることがわかった。(『「学力」の経済学』)

さらに、「日本人は小学校低学年から中学校1年生にかけて自尊心の低下が特に著しい」ことも分かっています。

一体この期間(小学生の期間)になにが起こっているのでしょうか。

 

自尊心を高める方法

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Skitterphoto (CC0), Pixabay

自尊心に関する研究は多く行われており、いくつかの研究では、

  • 自尊心が高いと学習意欲や学力が高い
  • 未成年の喫煙や飲酒などの反社会的行為が少ない
  • 社会人になってからの勤務成績、幸福感、健康状態が良好

などの傾向が示されました。

 

これを受けて「家庭や学校で子どもの自尊心を高めるよう働きかけることが重要」となるのは普通の流れですよね。

しかし、コトはそう単純ではないようです。

これらの考え方をベースにしてアメリカのカリフォルニア州で行われた実験では、自尊心が高まれば子どもたちを社会的なリスクから遠ざけることができるという有力な科学的根拠はほとんど示されなかったそうですし、

それどころか、

別の研究では、学力が高いという「原因」が、自尊心が高いという「結果」をもたらしたと結論付けられています。

 

さらに、子どもの自尊心を高めるような取り組みは、学力を上げる効果は薄く、場合によっては学力を下げてしまう効果を持つという研究結果もあります。

さらにさらに、もともと学力の低い学生に自尊心を高めるような介入を行うと、悪影響となり、「良くない成績を取った」という事実を反省・改善する機会を奪ってしまうことになることも明らかになっています。

 

つまり、

「あなたなら絶対できる!」
「前は良い点取れてたんだから、今度も大丈夫よ」

のようにむやみやたらに子どもを褒めていると、実力の伴わない自意識過剰な子どもを育ててしまうことにつながりかねないということです。

 

「褒めて育てること」が良いのか悪影響なのか、よく分からなくなってきましたね。

 

結局のところ「褒め方」が大事

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Pexels (CC0), Pixabay

では、子どもを褒めていけないのでしょうか。それは違います。重要なのは「褒め方」です。

人を褒める際には大きく分けて2つの褒め方があります。

  • 「能力」を褒めること
  • 「努力」を褒めること

です。

 

たとえば、宿題を早く終わらせた子どもに対して、
「あなたは頭がいいのね」「よく頑張ったね」という褒め方では、どちらが効果的でしょうか。

「頭がいいのね」は子どものもともとの能力を褒める言い方、「よく頑張ったね」は努力したことを褒める言い方です。

 

実験では、子どものもともとの能力(頭のよさ)をほめると、子どもたちは意欲を失い、成績が低下することが分かっています。

 

また、褒め方の違いが子どもたちのテストなどへの取り組み方にも影響を与えるという実験結果もあります。

実験:

「頭がいいのね」と、もともとの能力を褒められた子どもは難しめのIQテストを受ける際に、このテストのゴールは「何かを学ぶこと」ではなく、「よい成績を得ること」にあると考え、テストでよい点数が取れなかったときには成績についてウソをつく傾向が高いことがわかった。

 

一方で、「よく頑張ったわね」と、努力した内容を褒められた子どもたちは2回目、3回目のテストでも粘り強く問題を解こうと挑戦を続けた。さらに、努力を褒められた子どもたちは、悪い成績を取っても、それは「(能力の問題ではなく)努力が足りないせいだ」と考えた。

つまり、子どもの能力を褒めることは、子どもの健全なやる気を削ぐことになる可能性が高い、ということです。

「そうなんだ!!」

しっかり覚えておきたいですね。

 

まとめ

今回は、「子どもを褒めて育てることは良いことか」という疑問について、変わった視点のデータを参考にして話を進めてきました。

結論から言うと、

子どもは褒めた方がいい。ただし、「褒め方」に注意。

でした。

「やればできるよ」ではなく、「◯◯頑張ったね」という努力を褒める。

結果はどうあれまずは「頑張った姿」や「取り組んだこと自体」を褒めていくことで、子どもたちは粘り強く努力をしようとしたり、難しいことに挑戦しようとする力が育まれるということです。

「能力」じゃなく「努力」を褒める。

これが重要です。

 

参考書籍

↓↓マンガ版↓↓

 

最後まで読んでくださってありがとうございました。

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