子育てにおけるブームの中で数年前からよく聞くようになった言葉があります。
それが「創造力」という言葉。
英語で言うと『creativitiy(クリエイティビティ)』です。
「クリエイティブな人になりたい」「子どもにはクリエイティブな人になってほしい!!」ってよく聞きますね。
また、現代では子育ての場面に限らず、企業を始めとする社会全般でも「クリエイティブな人材」が求められているようです。
そこで今回は、
- 「創造力がある」「クリエイティブである」とは一体どういうことか
- 創造力に関して多くの人が誤解しているんじゃないかと思う点
- どうやって「創造力」を養ったらいいのか
- 子育てにはどんなことに気をつけたらいいのか
を、保育士目線で書いてみようと思います。
創造力とは??
まずはじめに「創造力って一体何??」というところから。
創造力というのは読んで字のごとく、「創る」と「造る」の組み合わせです。
つまり、何かを「創り出す」ことだと言えます。「独自のアイデア」とか「奇抜なアイデア」とか言われることもありますね。
一般には芸術の分野やITなどの最新の分野で使われることが多いのかもしれません。
「こんな便利なサービスをどうやって思いついたんだろう」
「このアプリは創造力の賜物だね」みたいに。
創造力についての勘違い
ただ、創造力について多い勘違いがあります。
それは「創造力って、何もないゼロのところから何かを創り出すんだから、才能だよね?」と思ってしまうこと。
創造力を才能だと思うから「自分にはそんな才能ない」「うちの子にそんな才能あるかしら」って諦めてる人が多いのかもしれません。
でも実際は創造力って才能じゃないと思います。
コピーライターでアメリカの広告代理店で最高顧問だったジェームズ•ヤングという人がアイデアについてこう言っています。
アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何物でもない
アイデアというのも創造力の一種だと考えるとこれってつまり、創造力もアイデアも、何もないところから突然現れるのではなく、それまでに得た知識や経験の中から「何かと何かが結びついて生まれるものではないでしょうか。
「スピーカー」と「耳栓」を組み合わせたら「イアホン」になった。
「ナイフ」と「ナイフ」を組み合わせたら「ハサミ」になった。
「電磁波」と「箱」を組み合わせたら「電子レンジ」になった。
どれも以前からあった物(既存の要素)の新しい組み合わせを思考した結果です。
■ジェームズ•ヤング『アイデアのつくり方』■
「考える」の本当の意味
さらにさらに、創造力について多くの人が勘違いしちゃっているんじゃないかと思うことがもう1つあります。
『創造力』を発揮するには頭で考えなければいけません。
先ほどのヤングさんの言葉にあるように、新しいものを生み出すには既存の物(事)と既存の物(事)の組み合わせを「考える」必要があります。
この『考える』ということを勘違いしている可能性があるのです。
あなたは普段から物事を考えてますか??
あなたのお子さんは自分で物事を考える子ですか??
この質問に対してはほとんどの人が「はい、考えてます」と答えると思います。
でももう一歩踏み込んでみると、意外と「考えていない」人が多かったりします。
「考える」には2種類ある
多くの人が日常使っている「考える」には2種類あります。
一つが「思考」する。
もう一つが「判断する」というもの。
さっきの「あなたは普段から考えていますか??」という質問に対して、
「私はちゃんと日頃から考えてるよ。だって、
『今日の晩御飯は何を食べよう』とか
『明日はデートだからこの服を着よう』とか
『雨が降りそうだから傘を持って行こう』とか
『ここは人が多いからはぐれないようにしなきゃ』とか
ちゃんと考えていますから。」
なんて思ったとします。
でも、この時の「考えていますから」はさっきの2種類で分類するなら『思考』よりも『判断』ではありませんか?
「考えているよ」と思っていたことが実は、今までの経験やそれまでに得た知識を使って、その状況に応じた最適な回答を「判断」しているだけです。
企業や会社で上司や管理職にいるような人たちが日々行っているのも多分こっちの方ですよね。
「あの部長はよく考えているからいつも最適な対応ができる」と言われたりするのは、トラブルがあった時や重要な案件があった時にそれまでの経験や知識を生かして「判断」しているのだと思います。
日本は「判断が上手な人」=「仕事ができる人」
で!ここが重要なのですが、日本では、この、「判断する力」が優れている人のことを「仕事ができる人」だと言うことが多い気がします。
そして、それを目指すかのように日本の教育現場は「判断する力」を養うような教育に力を入れています。
例えば、保育園児に白い画用紙を渡して先生が「今日はリンゴとミカンを書きましょう」と言えば、子どもたちは「どう書こうか」がスタートになりますよね。これは「判断」です。
でももし、「ここに赤色と青色を使って何か書きましょう」と言えば子どもたちはまず「何を書こうか」がスタートになります。こっちは「思考」。創造力に繋がります。
大人からすれば「何を書くか」も「判断•選択」になるんじゃないかと思うかもしれませんが、決まった型が少ない成長中の子どもたちからすれば、それが創造力を育てることにつながると思うのです。
子ども自らが考えることができるような課題を提供してあげることで、子どもは一生懸命に思考し始めます。
ぼくの知り合いが働いている保育園や幼稚園の中には、
「はい、みなさん!今日はクレヨンでお顔を書きましょう!
はい!目は黒ですね、みんな黒のクレヨンを持ちましょう!
はい!口は赤ですね、赤色をクレヨンを持ちましょう!
はい!それぞれ個性的な似顔絵になりました!」
みたいな保育をしているところもあります。
これで子どもの創造力が育つのでしょうか?
これで育つのは「大人から言われたことに従う力」だけではないでしょうか。
子どもたちに「思考」させてあげて〜
心からそう思います。
というわけで、「判断する」っていうのは最近求められている「クリエティブ」ではないですね。
判断力はA or B、創造力はA+B=C
「判断する」というのは、AとBがあった時に「この場合はAだな」とか「今日はBの気分」と決めることです。
「思考する」とか「クリエティブ」というのはきっと、
AとBがあった時に、それを組み合わせたりしてCを創り出すことだと思います。
一言で「考える」といっても、2つの意味が同じ言葉で使われているということを理解して、それが「思考」なのか「判断」なのかを区別することは、創造力を育てるための第一歩だと思います。
もちろんいきなりは意識できないかもしれませんが、それを知っているだけでも見方がだいぶ変わると思います。
もちろん、バランスは大事なので「思考するだけ」や「判断するだけ」のようにどちらかに偏らないようにすることも大切だと思います。
ただ、現代の日本の教育現場や会社は「判断すること」の方に重心が置かれすぎてるのかなって思うのです。
上司が部下に、「よく考えろ!」って言う時は、たいてい「その状況に合った一番良い方法を判断しろ!」という意味のことが多いでしょうし、
友だちに「今度何して遊ぶ?」と聞いて「考えとくよ」と返ってきた時はたいてい、「いろんな選択肢がある中から一番良さそうな所を判断しておくよ」という意味であり、決して「今までの経験を駆使してみんなが楽しめる新しい遊びを週末までに開発しておくよ」ではないと思います。笑
創造力を育てるには?
では最後に、保育士のぼくが思う「子どもの創造力の育て方」について書いて今回の記事を終わりにしようと思います。
最初に書いたように、創造力とは「何もないところから何かを生み出す」ようなものではなく、すでに知っている、もしくはすでに経験したことのある物事を組み合わせて生み出されるものだと言われています。
だから子どもの創造力の育てるにはまず、「たくさんの経験」と「たくさんの知識」がキーワードになると思います。
組み合わせる材料が多ければ多いほど、多様なものが生まれますからね。
でもそれだけだと誤解しやすくなってしまうものです。
というのも、経験や知識が大事だからといって、ピアノ教室とプール教室に何年も通ったらクリエティブになるのか??塾に通って数学や英語をとことん勉強したらクリエティブになるのか??
答えはノーだと思います。
いくら経験や知識ばかりが増えても、「使い方」が分からなければそれらはただ「判断•選択するだけの道具」になってしまいます。
「創造性を!!」と思うのであれば、やっぱり「思考する」というのがキーワードになると思います。
先ほど例にした、画用紙を渡して「赤色と青色を使って何か書いてみよう」っていうのも一つだと思いますし、空箱と新聞の折り込みチラシとハサミとテープとノリを渡して「これで何が作れるかな?」って作らせてみるのも一つだと思います。
例えば子どもに買い与えるおもちゃにしても、
現在は乗り物のおもちゃ一つとっても、飛行機から電車や車など、めちゃくちゃリアルな物ばかりですよね。パッと見た時に「それにしか見えない!!」っていうのもちょっと考えものだとぼくは思っています。
想像力の豊かな子どもたちは、何の変哲も無い積み木の一つを飛行機にもできるし、電車にもできるし、車にもできます。落ち葉を拾ってきてお皿にもできるし、髪飾りにもできるし、お金にもできます。
想像力と創造力は繋がっていると思うので、子どもにおもちゃを与えるのであれば、ぜひとも「子どもの想像力と創造力を養えるものを」と思います。
「創造力」という点で言えば、すでに完成されたテレビゲームやスマホのゲームなどは養うことは難しいかもしれませんね。
創造性を育てて、人生をより楽しく過ごしていきたいですね!!
保育士がすすめる子どもの創造力を養うおもちゃ
保育士のぼくが「子どもの創造力を養うのにいい!」と思う物をいくつか紹介して終わりにしようと思います。
1.白木の積み木
白木の積み木は、いわゆる「普通の積み木」です。
シンプルだからこそ子どもたちがイメージを広げやすく、お城にしたり、街にしたり、車や電車、食材に見立てればままごとだって出来ちゃいます。
今までプ◯レールやトミ◯、など、「それにしか見えない」おもちゃに慣れていると、最初は遊び方がわからなくて戸惑うかもしれませんが、子どもは遊びの天才です。きっとすぐに慣れて創造力を膨らませて遊び始めることでしょう。
2.カプラ
保育士や幼稚園教諭なら絶対知っているカプラです。
こちらも白木の積み木に負けず劣らずシンプルな木の板なんですが、遊びの幅は本当に広いです。
値段が少しばかり高いのが痛いところですが、子どもの創造力を育てるにはすごく良いものだと思います。
カプラで遊んでいると「創造力」に加えて「集中力」や「手先の器用さ」もすごく養われます。
3.レゴ
定番といえば定番ですが、レゴも創造力を養うにはもってこいです。
「◯◯セット」みたいに売られているものじゃなくて、とにかくたくさんレゴブロックが入っているものがオススメです。
「自分で考えて造る」を大切にしたいので、「こう組み立てたらこうなりますよ」では「判断力」になってしまいますからね。
4.お父さん•お母さん
当然ですがこれはお店で売っているものではありません。
でも、子どもの創造力を養うにはとっても大切な存在なんです。
子どもの身近にいて、何かに疑問に思った時にすぐ聞ける相手はお父さんやお母さんです。
子どもの「何で??」「どうして??」という質問ににすぐ答えを返さないで、
「〇〇は何でだと思う??」
「◯◯ちゃんはどうしてだと思う??」
と尋ね返してあげてください。
子どもはそこから自分なりの思考をスタートさせるはずです。
そして子どもが出した答えに対して、絶対に否定しないであげてください。
一生懸命考えたのにそれを否定されたら子どもたちの気持ちは一気に下がってしまうし、「考ることを嫌う習慣」がついてしまうかもしれません。
「そう思うんだね」とか「それは面白い考えだね」と一言認めてあげるだけで子どもたちは満足してくれます。
そのやりとりが自信となって、子どもたちは思考力や創造力を養っていくことができるのです。
1人でも多くの創造力豊かな子どもが育つように願っています。