「保育士の給料は低い!!」「仕事量や責任に対して待遇が悪過ぎる!!」
こんな声が全国の保育士さんから上がっていますね。
ぼくもそんな現実を切実に感じている元男性保育士です。
もちろん保育士だけではなく、今の日本では満足のいく給料をもらっている会社員が多くないのは知っています。
だから保育士だけが待遇が悪いような言い方をしてはいけないと思うのですが、今回は保育士をしていた時代にずっと考えていたことを書こうと思います。
それは「保育士の給料が上がらない本当の理由について」です。
普段は子育てをしているママ向けに記事を書いていますが、今回は全国の保育士さんに読んで欲しい記事です。
保育士の給料はホントに低い?
さて、「保育士は給料は低い、仕事量が多い、待遇が悪い」とあちこちから聞こえてきますが、実際にはどうなのでしょうか?
ちなみに、ぼくが直近まで勤めていた保育園の給料は(29歳保育士経験5年で)だいたい手取りが毎月16万円くらい、ボーナス含めても年収でいうと300万円ギリギリ届くかなという額でした。
正直、30歳直前の男性でこの金額はちょっと厳しいなと思います。しかもその10年継続して働いてもほとんど昇給がない状態だったので、一般的な認識だと将来家族を支えるのは相当厳しい待遇でした。
しかし、全国的にみれば、もっと給料の低い保育士さんはたくさんいるのではないかと思います。
保育士の全国平均年収はいくらなのか、転職サイト「マイナビ保育士」のサイトにこんなデータがありました。
保育士の平均年収
20代 年収273万円(手取り約16万6000円+ボーナス)
30代 年収275万円(手取り17万円+ボーナス)
40代 年収331万円(手取り19万5000円+ボーナス)
どうでしょうか。衝撃的なのは20代と30代で年収が2万円しか変わらないという事実です。
年収が2万円アップということは月収でいうと1,666円です。20代の忙しい10年間を過ごして30代になってもこの金額では、やはりキツイですよね。
参考までに、全ての職業を含めた年代別の年収をみてみると、
全国職種の年代別年収
20代前半 年収377万円
20代後半 年収488万円
30代前半 年収580万円
30代後半 年収651万円
40代前半 年収717万円
40代後半 年収748万円
改めて衝撃的です。
このランキングにはいわゆる高給の仕事(医師やパイロット、金融業)も含まれているとはいえ、これほど差があると、さすがにちょっと悲しくなりますよね。
何と言っても保育士の40代年収(331万円)よりも、全国平均の20代前半年収(377万円)の方が高いという悲しき事実。
やはり、「保育士の給料は低い」は間違いではないようです。
「保育士の給料はやっぱり低いんだ」ということが改めて分かったわけですが、今回の記事のテーマは「どうして保育士の給料は低いのか」です。
ここからはぼくが保育士をしながら考えていた保育士の給料が低い理由について書いていきます。
家計を健全にするための方法
というわけはまずは、「家計簿」について考えてみたいと思います。
なぜ「家計簿」なのか。
それはあとで分かりますので少しだけお付き合いください。とても重要なんです。
あなたは家計簿をつけていますか?
収入と支出を管理するあの家計簿です。ノートを作って管理している人もいれば、スマホのアプリを使って管理している人もいると思います。
給料が低い保育士であれば、家計簿の重要さは特によく分かると思います。クレジットカードなどを併用し出すとあっという間に口座からお金が減っていき毎月カツカツの生活になりますからね(ちなみにぼくは経験済み(笑))
毎月いくら手取りがあって、食費や家賃、通信費などでいくらお金が支出されるのか。
それを管理しているのが家計簿です。
そして健全な家計簿であれば月の終わりに「黒字」になる状態だと思います。
つまり収入よりも支出が少ない状態です。
よって家計を健全にするためには、「毎月の収入以内の支出で生活をする」というのが鉄則になります。
何を当たり前のことを言っているんだと思わないでくださいね。笑
赤字を黒字にする方法は?
では、質問です!
もしもあなたの家の家計が、毎月毎月赤字会計で、収入よりも支出の方が多かったら、どう対処しますか?
家計を健全にするためには「収入以内の支出で生活する」が鉄則でした。
ということは、赤字会計を健全にするには原則この2つの方法しかありません。
それは、
- 収入を増やす
- 支出を減らす
です。
分かりやすく言えば、(給料などの)収入を増やすか、ムダな出費を削って節約するしかありません。
本屋に売っている資産形成(お金持ちになるため)の本を読んでも、
資産形成=(収入ー支出)+(資産×運用利回り)
とあります。
今回はお金持ちになる話ではないので前半の「(収入ー支出)」だけみていただきたいですが、家計を健全にするにはとにかく
- 収入を増やす
- 支出を減らす
これが基本になるということです。
国の財政を1つの家計に見立ててみると
さて、家計簿の重要性を改めて確認したところで次は、日本の「家計簿」を覗いてみたいと思います。
「日本は借金だらけ」ということはニュースなどで聞いたことがあると思いますが、保育士の給料が低い理由もそれに関係しているとしたら、、、?人ごとではないですよね。
これ↓は2018年(平成30年度)の国の家計簿です。「国」と聞くととてつもなく巨大な存在を想像してしまいますが、国にももちろん、一般家庭と同じように「家計簿」があって、収入(歳入)と支出(歳出)があります。
グラフ中央を見ると、歳入と歳出が共に98兆円で、一見すると赤字のない健全な家計簿のように見えます。
しかし、問題はその内訳です。
- 歳出98兆円のうち23兆円は過去の借金の返済
- 歳入98兆円のうち34兆円は新たな借金
借金を返すために新たに借金を繰り返している、、、しかも返済している以上の額ををさらに借金しながら、、、これはいわゆる自転車操業のまずい状態です。
しかも将来的には高齢者は増える一方で医療費や年金などの社会保障費はどんどん増えていきます。さらに働き手となる若者人口は減っていくので税収(所得税・消費税)は減っていく予想です。
つまり、今の日本は、
- 収入よりも支出が多い家計の状態
- 収入はこの先減っていくだろう
- 支出はこの先増えていくだろう
という現実があります。
さきほど確認した「健全な家計」とは真逆の方向へ進んでいることが分かります。
まずいですね。
健全にするためにはどうする?
では、ここでもう1つ質問です。
「日本の家計簿を健全にして欲しい」と誰かから頼まれたとします。
あなたなら一体どうしますか?
きっといろいろな方法が思いつくと思います。
ただ、どんな方法にしても、重要になる考え方の根本は、「収入を増やすこと」と「支出を減らすこと」のはず。
だから日本の政府も、「消費税増税(収入を増やす)」や「年金受給時期を遅らせる(支出を減らす)」といった対策をするわけです。
国も、「国の家計健全化」のために、「収入を増やす」「支出を減らす」という原則にのっとっています。
保育士の給料は「支出」?
では、いよいよ保育士の給料が低い理由についてです。
この、「国の家計健全化」という考え方を【保育士】という職業にピンポイントに当てはめるとどうなるか。
今回の記事はココが一番重要です。
保育士も働きながらお給料をもらい、その一部を税金として国に納めていますよね。給与明細の総支給額と手取り額に差があるのはそのためです。
「じゃあ保育士の給料を上げれば税収アップに貢献するからいいじゃん!」
最初ぼくはそう思っていました。しかし、「国の家計」という大きな単位で考えてみると、そうではないことに気づいてしまったのです。
それを説明するために、ここから少しだけ小学生の算数の問題みたいな話になります。
保育士には配置基準がありますよね、「保育士1人あたり◯人の子どもまで預かれる」というあれです。保育士1人で、0歳児であれば3人まで、5歳児であればおおむね30人までの子どもを保育することができますね。
では、たとえば保育士1人が30人の5歳児を預かるとします。
すると単純に考えるとその30人の子どもの背景には(お父さんとお母さん合わせて)60人の親がいます。
ということはですよ、1人の保育士が5歳児を30人を預かると、60人の大人が社会で働くことができます。
もちろんパパもママも全員がフルタイムで働くわけではないですが、仮にパパママがフルタイムで働くとすると、先ほどの年代別収入では親世代である30代の年収は580万円〜651万円でした。
分かりやすく間を取って約600万円とすると、60人×600万円=3億6000万円になります。
つまり!保育士1人が5歳児30人を1年間預かると、その親たちから3億6000万円のお金が産み出されてその一部が税収として国に入るということです。
そう考えると「保育」というサービスは「家計健全化」を目指す国にとってとても効率の良いものに思えますよね。
これ、ものすごくストレートに言い換えると(あくまで予想ですが)、
「保育士の給料を上げるよりも、保育士の給料は最低限にして(国とって支出だから)、保育士が子どもを複数預かっている間に、親御さんたちに働いて効率よく税収を増やそう!」
「昔は男性だけの税収でもなんとかなったけど今は不景気で労働力が足りないから女性も社会に出てフルタイムで働いてもらおう!」
「保育園の数を増やしたり、保育料無償化にするから、どんどん子ども預けて働いてねー!!」
と言われているようで。日本という大きな家計を効率的に健全化しようと考えた時、そんな心の声が聞こえてきそうです。
思い出してください。「健全な家計」の原則は、「収入を増やすこと」と「支出を減らすこと」でした。
この考えでいくと保育士の給料は国にとって「支出」に分類されています。
保育士の給料はほとんどが国や県、市町村からの補助金ですからね。
ということは支出(保育士の給料)を少なくして、収入(親世代からの税収)を増やそうとするのは、国の家計健全化の視点から見れば当たり前の考え方ということでしょうか、、、
つまり!
保育士の給料が上がっていかない理由は、「(国全体の利益を考えると)上げない方が得策だから!!」なのかもしれません!!
国が女性の社会進出を応援することも、保育料を無償化にすることも、国の収入アップに繋がる投資なんじゃないかと思えてくるわけです。
あ〜ぁ。世知辛いですねぇ。
結論、今のままでは保育士の給料は上がらない!
正直、この考え方はとても冷めた考え方だと思います。
しかし、「保育士の給料が低い」という点だけに的を絞って考えていくと、この結論にたどり着きました。
保育や幼児教育のことを専門的に学んだ保育士からすると「保育」や「子ども」を軽視している感じしてとても不愉快です。まして給料も低いんですからね。
幼児教育をないがしろにする方針は、長期的にみれば日本にとってとても痛手だと思います。
多額の借金を子どもたちに残し、税収のために幼少期の子どもと親を引き離す。
どうしてこんなことになってしまったのか。
保育士ならきっと分かっていただけると思います。
子どもに適切な環境を用意することの大切さを。
子どもに投資することは、長期的にみれば将来の日本のためになると思います。
幼少期の過ごし方はめちゃくちゃ重要ですから。
保育士の給料があがってモチベーションも上がれば、今以上に質の高い保育もできると思います。
しかし国はそうは考えていないようです。
それが証拠に、国の歳出をみると、保育は「教育費」ではなく「社会保障費」に分類されています。
子どもへの投資となる「教育」は小学生からで、就学前は「福祉」の扱いなんです。
今、「保育」は「将来の若者」のためのよりも「今の親世代」へのサービスになっているような気がします。国の運営を「数字」で考えるとこういう結論に至るんですかね、、、。
というわけで「今のままでは保育士の給料は上がっていかないだろう。」というのがぼくが保育現場で働いていた時に実感したことです。
さいごに
急速に時代が変わりつつあります。
最近の若い人は物を買う時、「これメルカリでいくらで売れるかな?」と、購入前から転売のことを考えるようになっているそうです。
旅行する時も出版社が出しているガイドブックは購入せず、現地を訪れた人が書いたブログを参考にするそうです。
いろんな業界でこの前まで常識だったことが非常識になりつつあります。
そしてこの流れは確実に「保育業界」にもやってきます。
今はまだ「そんなのあり得ない」ということが、数年後には「当たり前」になっている可能性がめちゃくちゃ高い時代なんです。
少子化で子どもが減れば保育士の数が減るのは当たり前です。今回みたように、国という家計を健全にしようと思ったら保育士への出費は減らした方が効率良いですからね。
「保育士」という職業がこの先になくなるとは思いませんが、その「在り方」は確実に変わるでしょう。
今現在、日本で保育士をしている人や、資格を持っていて数年後に復帰を考えている人、これから保育士の資格を取ろうとする人は、時代の変化に合わせた働き方を考えておく必要があると思います。
この内容が日本全国の保育士さん、保育士を目指す学生さんに届いて欲しいと思います。
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参考になる書籍
今回の考え方に至った経緯はたくさんありますが、その中でも保育関連の書籍の影響は大きいです。
この記事を読んで頭に「?」が浮かんだ方はぜひ読んでみてください!タイトルは難しいですが、保育士経験がある方であれば「うんうん」と頷きながら読めると思います。
最後まで読んでくださってありがとうございました。