子どもが生まれると最初に気になるのは、睡眠・食事・排泄のことですよね。
命に関わることで生活の基礎になる部分なので、特に気になるのではないでしょうか。
その中でも特に、赤ちゃんの睡眠に悩むママは多いです。
なぜなら、赤ちゃんの睡眠リズムは極端に短く、(特に生後6ヶ月頃までは)ママの睡眠時間は大きく減少することになるからです。睡眠不足や精神不安はママにとって深刻な悩みだと思います。
そこで注目されるのが赤ちゃんの「ねんねトレーニング」です。
結論を先に言うと、赤ちゃんへの睡眠トレーニングは一定の効果があり、逆に副作用は認められていません。
ただし、月齢や個性によっても違いがあるので注意は必要です。
ねんねトレーニングとは
そもそも「ねんねトレーニング」とはカナダやアメリカで盛んに行われているトレーニングで、「赤ちゃんが朝までぐっすりと眠れることで母子ともに良質な睡眠を取ること」を目的に行われています。
産後まもなくは赤ちゃんの睡眠リズムが非常に不安定なので、時間帯に限らず授乳や夜泣きで赤ちゃんが起き、親は精神的・身体的に非常に負担がかかります。
「睡眠トレーニング」を考えるきっかけになるのは、母親の寝不足解消や精神安定を求めて、が1番多いのではないでしょうか。
ねんねトレーニングの方法
「ねんねトレーニング」には大きく分けて2つの方法があります。
“泣かせ続ける方法”と“泣いたら関わる方法”です。
“泣かせ続ける方法”
「泣かせ続ける」と聞くと「え?虐待なんじゃないの?」と思ってしまいますよね、、、
泣かせ続ける方法は、英語では「cry it out(泣かせっぱなし)」と呼ばれたりします。布団に寝かせたら子どもが泣いても抱き上げたり授乳したりせず、そのまま泣かせておきます。
しかし、完全にほったらかしにする訳ではありません。
提唱されている手順としては、
- 赤ちゃんが起きた状態で寝床へ寝かしてその場を離れる
- 泣き始めたら3分待ってから様子を見に行き、安心できる声掛けを行う(抱っこや授乳はしない)。滞在時間は1、2分にする。
- 2度目に泣き始めたら今度は5分待ってから様子を見に行き、安心できる声掛けや布団の掛け直しを行ってから離れる。
- 3度目に泣いたら今度は10分待ってから、、、というように時間を少しずつ延ばしていく。
- これを1週間程度続けて、最終的には様子を見に行くまでの時間を30分までに延ばす。(参考:【カナダBC州の子育てレポート】 第3回 カナダにおける「ねんねトレーニング」)
です。
たいていの場合は3-4日ほどでたいていの赤ちゃんはよく眠るようになるそうですが、逆に1週間続けても効果がない場合は、他の方法に変えるか、時期を変えた方がいいと言われています。
“泣いたらすぐ関わる方法”
泣いたらすぐ関わる方法は、文字通り、布団に寝かせた後に泣いたらすぐに赤ちゃんの元へ行きます。
そして、
ステップ1:
抱っこや授乳を行いますが、眠る直前に布団の上に戻し、腕の中ではなく布団の上で入眠することに慣らしていきます。
ステップ2:
泣いても授乳や抱っこは行わず、おでこをさすってあげたり、お腹を優しくトントンしてあげることで再度眠りにつくことを促します。
ステップ3:
泣いたら近くでの声掛けや隣の部屋からの声かけなど、距離を置いた対応をしていきます。
ポイント:
●もしうまくいかない時は前のステップに戻って対応を行います。
●一つのステップを数日間続けて行います。
赤ちゃんは様々な環境に順応していきますが、いきなりできるようになるわけではありません。少しずつ少しずつ、ここは根気強さが必要になります。
注意ポイント
睡眠トレーニングの開始は、生後6ヶ月以降が望ましいとされています。特に生後0-3ヶ月ではまだ、脳や体の発達が十分ではないので夜中の授乳や大人に関わってもらうことによる安心感を必要としているからです。
赤ちゃんの睡眠時間と睡眠リズム
赤ちゃんにとって長時間の睡眠は必要不可欠なものです。
毎日たくさんの刺激を受け取るので、その情報処理に多大なエネルギーが必要になります。
睡眠をたくさん取ることで脳の神経回路を発達させたり、体を回復させたりするので子ども時代の睡眠はとても大切です。
睡眠時間が短くて何度も起きてしまうことには以下のような理由があります。
生後0-3ヶ月
(生後0-3ヶ月頃の赤ちゃんは)体が小さく、まだ少ししか栄養を貯蓄できないのにも関わらず、脳と体の発達のために大量のエネルギー消費するので、こまめにエネルギーを摂らなければなりません。
また、安心感を得るために頼れる存在を求めている面もあると言われています。
新生児の睡眠時間は特に長く、1日18時間になることもあります。そして、多くの場合2〜4時間おきに目を覚まします。
生後3ヶ月頃には数回の昼寝を含みながら合計15時間ほどになり、生後6ヶ月頃には合計12時間ほどに調整されていきます。
生後6-12ヶ月
生後6-12ヶ月頃になるとまだ昼寝も必要としますが、夜の睡眠時間が長くなります。
睡眠リズムが安定してくるこの頃から「入眠のパターン」を習慣づけるとスムーズにいきやすいはずです。
この時期の赤ちゃんは生理学的には夜中の授乳を必要としていないので、夜泣きする場合は感情的な理由が主で、「落ち着かせてもらいたい」「不安な気持ちに共感して欲しい」という思いが強いと考えられます。
また、しばらく夜泣きが無かったにも関わらず、また夜泣きが数日続くようになった場合は体の問題のサインかもしれません。
例えば、
- 騒音
- 耳や鼻の痛み
- 日中の活動不足
- お腹にガスが溜まる
- 歯が生えてきてむずがゆい
などの理由で睡眠が妨げられているかもしれません。
睡眠トレーニングの賛否
睡眠トレーニングは賛否が分かれることで有名です。
その理由の1つに、「泣いている赤ちゃんをそのままにしておくなんて可愛そう」「わざわざ泣かせ続けてまでしなきゃいけないことなの?」という睡眠トレーニングへの反対の意見が多いことがあります。
ここで重要なポイントは、睡眠トレーニングによる悪影響は報告されていないということです。
感情論として「泣いている赤ちゃんを放っておくなんて可愛そう」という気持ちはすごく分かります。しかし、科学的には「その後の発達に悪影響はない」という研究データが多いことも知っておくとよいでしょう。
以下に、睡眠トレーニングに関する主な意見を紹介します。
否定的な意見
泣き続けるストレスがコルチゾール(発達を妨げるホルモン)を赤ちゃんの脳に充満させる!
→持続的で強いストレスは幼い脳にダメージを与えることは広く知られています。しかし、発達障害の原因となるレベルの強いストレスは、暴力的な虐待、性的な虐待、深刻なネグレクト(育児放棄)などと言われています。
「愛着形成」の阻害になる!
→育児・保育業界では有名な「アタッチメント(愛着)」という言葉があります。これは、
子供は社会的、精神的発達を正常に行うために、少なくとも一人の養育者と親密な関係を維持しなければならず、それが無ければ、子供は社会的、心理学的な問題を抱えるようになる。
という心理学者のボウルビィが提唱した考え方で、養育者との「親密な関係」を築く期間が生後〜2歳までと考えられています。
なので「人間関係を築く重要な時期だから、睡眠トレーニングで泣かせたままにしておくなんてあり得ない」という考え方です。
肯定的な意見
睡眠トレーニングで夜泣きや目覚めの回数が減ることは確か。
→生後4〜10ヶ月の乳児25人を対象にしたノーステキサス大学の実験では、赤ちゃんは3 日で泣かずに眠るようになった。
→全米睡眠医学学会はねんねトレーニングに関する19本の論文を調査し、夜泣きや目覚めの回数が減ったとする結果が17本で認められたことから「効果ははっきりしている」と結論付けた。
よって、ねんねトレーニングにはメリットがあることが証明されています。
副作用や後遺症は認められない
→オーストラリアで、乳児期にねんねトレーニングを受けた173人の6歳児を対象にした副作用の調査では、情緒の発達や親子の親密度などで、睡眠トレーニングを受けていない6歳児との差は認められなかった。
つまり、ねんねトレーニングを行うことによる子どもへの害はないので安心してください、ということです。
他には、母親が産後うつになるリスクも軽減できるという説があったりするなど、「ねんねトレーニング」には何かと肯定的なデータが多いです。
「睡眠トレーニング」には賛否両論あるものの、子どもにとって無害であることは立証されているので、適切な時期(5〜12ヶ月)に少しだけでも取り入れてみるのもいいかもしれません。
上手くいけば、赤ちゃんはぐっすり眠ることができ、ママやパパは心に余裕が持てるようになるのでWin-Winです。
睡眠トレーニングをする時に気をつけること
さいごに、睡眠トレーニングを行う場合のポイントをまとめておきます。
睡眠トレーニングのポイント
- 生後0-3ヶ月までは避ける
- 完全に放置せずにこまめに様子を見る
- パパにも参加してもらう
- 夕方は起きている生活リズム
- 入眠までのリズムをパターン化する
生後0-3ヶ月までは避ける
この時期は生理学的にも夜中の授乳が欠かせません。また、信頼できる大人の存在も重要です。この時期の赤ちゃんは、「目の前からいなくなった大人はただ別の場所に行っただけで本当にこの世から居なくなったわけではない」という理解がまだできません。つまり、ママが視界からいなくなるととてつもない不安に襲われるわけです。
睡眠トレーニングを始めるのは「視界からいなくなってもまた戻ってくる」という認知ができるようになる生後6ヶ月前後が理想です。
完全に放置せずにこまめに様子を見る
海外では睡眠トレーニングをストイックに行っている家庭も多いようですが、夜寝かせてから朝までの完全放置は絶対にやめましょう。(アメリカやオーストラリアでは赤ちゃんにも一人部屋を用意して親と別々で寝ることがよくありますが個人的にはとても怖いです。)
日本ではそのような環境は珍しいと思いますが、赤ちゃんはSIDS(乳児突然死症候群)や掛け布団や嘔吐などによる窒息などの危険が常に考えられます。
泣いていないからといって過信せず、こまめに様子を確認してあげましょう。
パパにも参加してもらう
睡眠トレーニングで効果的な方法の1つとして「パパとの連携」があります。
赤ちゃんは夜泣きをした際にママが来ると授乳を求めてさらに激しく泣く場合もありますが、パパが来ると安心感だけを得てすぐに寝入ることもあります。(普段からパパと関わりを持ち、赤ちゃんがパパに対して安心感を持っていることが重要ですが。)
夜中の子守りを分担することでママの負担軽減にもなります。
夕方は起きている生活リズム
赤ちゃんが夜長い間寝るためには、夕方の時間帯に昼寝せず起きていることも大切な要素です。就寝前の4時間は起きていることが望ましいと言われています。
もちろん、夕方に眠そうにしている赤ちゃんを無理矢理に「ああ!まだ寝ないで!まだダメ!」と起こしてまですることではありません(それはまだ睡眠トレーニングの時期ではないのかもしれません。)
午後の昼寝のあとは夜まで起きているくらいの生活リズムが整っていると、睡眠トレーニングもスムーズにいくでしょう。
入眠までのリズムをパターン化する
睡眠リズムは学習してできるようになるものではなく、生活リズムに合わせて調整されていくものです。
夕食から就寝までのリズムを(なるべく)毎日同じにすることで、子どもは自然と眠ってくれるようになります。
リズムをパターン化することが何よりのポイントです。
望ましいリズムは、
夕食
→入浴
→絵本(+静かな時間)
→就寝
です。
理想とする就寝時間(例えば19時〜20時前後)から逆算して夕食や入浴の時間を早めに取ることで、親にも余裕が生まれ、入眠までのリズムを心地よく作ることができるでしょう。
さいごに
結論を言うと、赤ちゃんへの睡眠トレーニングはしても大丈夫です。ただし、実践する場合は赤ちゃんの時期や様子を見ながら様々な方法を試してみることをオススメします。
もちろんパパとの連携や入眠までのリズムのパターン化でママの負担が大幅に軽減する場合もあります。
研究結果では「生後0-3ヶ月の赤ちゃんへの睡眠トレーニングは避けるべき」と言われていますが、実際問題、その時期がママにとって1番キツイ時期だと思います。
ママの睡眠不足や育児過労が深刻な場合は決して抱え込まず、身近な誰かに相談したり、ベビーシッターを活用するなどして、睡眠時間の確保やリフレッシュを行いましょう。
産後の睡眠不足や精神不安に悩むママはたくさんいます。我慢のし過ぎは禁物です。
「睡眠トレーニング」と聞くとなんだか大変なことを赤ちゃんに強いるような気がしますが、特定の方法にだけとらわれずに、家庭に合った方法で挑戦してみることが母子ともに良質な睡眠を取ることに繋がるのだと思います。
睡眠に関するおすすめの本
最後まで読んでくださってありがとうございました。